グローバルイジャパニーズを話すことの重要性

多国籍チームの共通語が日本語であるが故の問題点

外国人材と働く職場で日本人リーダーが外国人に日本語でコミュニケーションをとっている際、本当に伝わっているの?と思うことがあると思います。

その場では部下がわかっていると答えていても出来上がった仕事を見ると思っていたのと違うなと感じたこともあるかもしれません。特にオフショア開発や製造の上流工程の指示を通訳や日本語ができるリーダーに指示をして「間違った指示」がそのまま下流まで流れて時間が経過し、出来上がった成果物を見ると全く違うものができていると絶望した経験のある方もいらっしゃると思います。このような上流工程のコミュニケーションロスは取り返しのつかない失敗に繋がってしまいます。

ほうれんそうという日本独特の文化が組織に浸透していればそのような失敗も防げるかもしれませんが外国人主体のチームや日本以外ではその常識も通用しません。
自分の指示に対して「わからない」とはっきりと答えてくれる文化圏であれば良いのですがそうでない国の方が多いのが実情であり、この記事ではどのような日本語を話せば職場でのコミュニケーションロスが防げるかを説明したいと思います。

グローバル環境で通じる語学力とは?

それを防ぐためには日本人リーダーの「グローバルジャパニーズ」能力を鍛える事をお勧めします。グローバルイングリッシュという言葉は聞いたことがあるかもしれませんがグローバルジャパニーズは筆者の造語であり「日本語を学んでいる外国人にも伝わるグローバルなジャパニーズ」という意味です。

グローバルジャパニーズの話をする前に例え話としてグローバルイングリッシュの話をさせていただきます。筆者は5年以上外国で外国人向けのコワーキングスペースを運営しておりそこには世界中から様々な人種の方は訪れ、様々な英語が飛び交っています。そのような場所で10カ国以上の人が参加するプロジェクトやイベントを開催するとその英語での会話の中で最も意思疎通が難しいのは実はネイティブの英語話者(つまりやアメリカ・オーストラリア・イギリスの方など)です。

その理由を端的に言えば彼らは英語という言語を簡単な文法・単語から学んだ経験がないからです。英語を外国語として学んできている外国人はどの国でも簡単な文法・単語から学び、それらを組み立てて話をします。また英語レベルも様々であり実際のところ英語でコミュニケーションが取れるという世界人口で考えると彼らの方が多数派であり、ネイティブの話者は少数派となります。それを考慮せず英語ネイティブが相手のペースを考えずに話をしているとそのほか大勢から「コミュニケーション能力のない奴だ」という烙印を押されます。

誤解がないようにいえば補足すれば英語ネイティブでも相手に合わせることができる人はたくさんいます。ですので先程のダメなやつという烙印を押されるのは英語ネイティブでかつコミュニケーション能力がかけている人になります(実際にそういう人は仕事もできない)。

グローバルなジャパニーズを話せていますか?

グローバルイングリッシュの話でこの記事の要点が理解できたかと思います。つまり日本語ネイティブの私たちが日本語を外国語として学んでいる人たちと同じようには日本語を学んできてはいないため一体彼らにとって何が難しい日本語で何が簡単な日本語なのかわからないことが問題となるという事です。もちろんコミュニケーション能力の高い人はそれを理解して相手に合わせて話せる人もいるかと思いますが実際のところやってみるとなかなか難しいのが現実です。また上司が言っていること「理解できない」「何度も聞き返す」というのは国籍関係なく部下が上司に対して言いづらいというのも理解してください。

日本で働いているのだから日本語を話せ、日本人のボスなのだから日本語を学べという気持ちもわからなくはありませんが外国人にとって日本語の習得は簡単なことではありません(相手は外国人同士だから世界共通語の英語くらい話せと思っているかもしれません)。特に日本で働く多くの外国人材は日本での就労には期限があるため日本語を完璧にマスターしようという気にならないといのが本音であり、学ぶなら英語をもっと上達させたいと思っている人も多くいます。

人材の流動性も高く、仕事として明日も現場に立ち外国人の部下を持ち成果をあげる必要があるリーダーにとっては相手の成長を待つだけでなく、自分自身の成長のためにも是非とも汎用的なスキルであるグローバルジャパニーズを身につけることを現実的な手段としてお勧めします。そのスキルがあればどこの国の人でのどの日本語レベルの人が来ても対応の幅が広がります。

グローバルジャパニーズを学ぼう

グローバルジャパニーズを学ぶ方法は意外なほど簡単です。職場に日本語検定の教材(N1~N5)の教科書を用意して休憩時間にでも同僚と一緒にパラパラと教科書をめくるだけでたくさんの気づきがあります。日本語非ネイティブの方がどのようにして日本語を学んでいるか知るだけで、意外な発見がたくさんあります。N1.N2などは日本語ネイティブでも難しいです。

実務としてはN3,N4程度の日本語で話すことを心がけましょう。そのほかにはなるべく短い文章、簡単な文法、単語、ゆっくりはっきり話す、曖昧語や意味が複数取れる言い方はしない(これが結構難しい)などを意識すればだいぶ伝わりやすい日本語になります。

まとめ

国内需要が頭打ちし勢いのある国へ進出したい、インバウンドの波に乗りたいと言った企業が多いなか英語の学習に精を出す人も多いと思います。英語ができるに越したことはありませんが現実的には社員全員がビジネスレベルの英語を話せるという企業は少ないと思います。

ただ日本人であれば日本語は話せますので今後日本国内の企業でも外国人と一緒に働くことがあたりまえとなる時代で、グローバルジャパニーズを話すことが社内の共通認識になれば外国人材が増えてもコミュニケーションロスも起きにくい会社としても大きな競争力となります。

海外からの労働者は多数の選択肢があり、先進国はどこも彼らの労働力を求めています。欧米をはじめとする出稼ぎ先では簡単な農作業でも最低給与3000USD(45万円)が保証されと英語でコミュニケーションがとれます。それと比較し日本では日本でしか使えない日本語を学ぶ必要があり手取りが15万円以下。また中国、韓国、台湾と選択肢がたくさんあります。その中で日本企業が生き残っていくためにはそれ相応の企業努力が必要となります。

その解決策の施策として、相手が自分に合わせて気持ちを汲む日本人としての特技を生かし、グローバルジャパニーズを話せる人が増えることは1つの解決策になるのではないでしょうか。相手が自分に合わせてくれているという謙虚な気持ちを持ち、相手に寄り添う気持ちを持てば上司としての人間的な信頼にもつながり、より良い関係性が構築できるはずです。

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有友正義

SPACE A Co.,Ltd Founder・株式会社JUST A CEO Travelers station SPACE Aを創設。世界50カ国以上から旅人が訪れ多様なプロジェクトを実施。海外進出企業向けにグローバルコミュニケーション領域に特化したダイバーシティマネジメントに関する知見を提供。ウェルビーイングな組織作りのための組織診断フレームワーク「Well-being 7model©️」を考案。